ウィンクラー法とは
ウィンクラー法は、水中の溶存酸素量を測定する方法の一つ。
ウィンクラー法の原理
第一段階:溶存酸素固定
水中に溶解している酸素を固定し、正確な量を定量できるようにする。
試料に、アルカリ条件下で硫酸マンガン(MnSO4)溶液を加えると、水酸化マンガン(Ⅱ)が生じる。(1)
溶存酸素が存在しない場合は、水酸化マンガン(Ⅱ)(Mn(OH)2)の白色沈殿のままであるが、溶存する酸素がある場合は水酸化マンガン(Ⅱ)を酸化させ、オキシ水酸化マンガン(Ⅳ)(MnO(OH)2)とする。(2)
もしくは、水酸化マンガン(Ⅱ)(Mn(OH)2)は酸化され、水酸化マンガン(Ⅲ)(Mn(OH)2)となる。(3)
(1)Mn2+ + 2OH- → Mn(OH)2↓
(2)2Mn(OH)2 + O2 → 2MnO(OH)2↓
(3)4Mn(OH)2 + O2 + 2H2O → 4Mn(OH)3↓
第二段階:ヨウ素の遊離
第一段階の際に加えておく、ヨウ化カリウムとオキシ水酸化マンガン(Ⅳ)及び水酸化マンガン(Ⅲ)は、塩酸もしくは硫酸添加による酸性条件下にて反応し、ヨウ素を遊離する。
2MnO(OH)2 + 4I- + 8H+ → 2Mn2+ + 2I2 + 6H2O
4Mn(OH)3 + 4I- + 12H+ → 4Mn2+ + 2I2 + 12H2O
いずれの反応においても、試料中の溶存酸素1モルに対して、ヨウ素が2モル遊離することがわかる。
第三段階:チオ硫酸ナトリウムでの滴定
この遊離したヨウ素を、チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)で滴定することで、定量する。
I2 + 2S2O32- → 2I- + S4O62-
1モルのヨウ素につき、2モルのチオ硫酸イオンを必要とすることから、試料中の溶存酸素1モルに対して、4モルのチオ硫酸イオンが必要となることがわかる。
補足:アジ化ナトリウムの添加
なお、第一段階の際にアジ化ナトリウムを添加することが多い。
アジ化ナトリウムを加える理由は、亜硝酸イオンを除去するため。
亜硝酸イオンは、ヨウ化物イオンと反応し、ヨウ素を生成するため、妨害因子として働いてしまいます。